提橋和男の新管理人のつぶやき

(2008/08/11)


提橋和男の新☆管理人のつぶやき 1097

挑戦、男たちの詩(83)

「野茂のおかげです」
        祝:ロッテ立花コンディショニングコーチ
                    6年半かけて筑波大大学院終了

継続こそ力−。この格言を”有限実行”した球界人がいる。ロッテ・立花龍司コンディショニングコーチ(44)は、先月25日付で筑波大大学院修士過程を終了。受験から終了までかかった日数は何と6年半。ただでさえ忙しいコーチ業との二足のワラジを支えたのは、日本メジャーのパイオニア・野茂英雄の存在だ。

修士となった立花コンディショニングコ−チ。努力の陰には野茂の存在があった。−1992年2月撮影−

立花コーチが修了したのは筑波大学大学院スポーツ科学専攻。受験勉強で1年半、入学から5年をかけて修士となった。「本当なら2年でしなければいけなかったんだけどね。でもコーチであるためには選手のためにも勉強しなければいけない。経験だけで教えられる時代じゃないからね」
照れ笑いを浮かべた立花コーチだが、実践するのは難しい。ロッテ戦士たちのコンディションに目を光らせる一方で、毎週金曜日の朝8時に大学院に通った。持ち前の集中力で必要な31単位を1年間で取得したが、「修士論文のために4年かかった。何度も書き直しになって…。ものすごく勉強になった」という。
同大学院では野球研究班に在籍。コーチングの歴史や指導面での深層心理学、トレーニング法など、バライティーに富んだ研究を行ったが、何よりものめり込んだのは、「現場でアレッ?」と思ったことを大学院で実際に調べること」だった。
「一塁に走る際にヘッドスライディングと駆け抜けるのではどちらが速いかといわれるけど、班で測定したらスライディングの方が速いことがわかった。それに野球教室で子供たちに腰の回転で打てと教えるけど、調べてみたら骨盤が回るから腰が回る。股間節を鍛えればさらに回るんです」

天狗になっていたときに見せられた向上心
修士論文もこのフィードバックのたまもの。体幹筋力についての労作だが、ヒントになったのが選手たちに続出した脇腹の故障。「脇腹のケガが多い。登録抹消された選手が12人いた際、うち9人が脇腹を痛めていた。何が理由で起きるのか1年かけて調べて論文にしました」。
書き上げたのは今年6月21日、交流戦で巨人と戦っていたときだった。それにしても、6年半も二足のワラジを貫くのは、並大抵の意志では完遂できない。
「近鉄にコーチとして入ったころは自腹で米国やキューバに行っていたけど3、4年してボクも有名になったものだと天狗になっていた。でも、そのころ近鉄には4年連続最多勝を取っていた野茂がいた。ある日、藤井寺球場の控室で野茂がビデオを見ていたんです。クレメンスとかメジャーの名投手の映像を自分で編集したモノなんだけど『この人たちと比べたらボクなんか屁ですよね』って。アイツは4年連続で賞を取っているのに向上心を失わない。ボクは恥ずかしくなった。今のボクがあるのも、野茂のおかげです」

立花コーチは今後も同大学院の野球研究班に籍を置き研究を進めるという。「若いコーチに続いてほしいんです。シーズン中は通信教育、オフは通学といったシステムを作ってほしい」。
野茂から引き継いだパイオニア精神をグランドと学窓で発揮するつもりだ。(山田利智)

=夕刊フジ2008年8月7日=