所属していた販売部門の業績が振わず、心ならずもリストラの憂き目にあったが、扱っていた商品に絶対の自信をもっていたことから、退職後に販売権を引き継いで起業したサラリーマンがいる。三菱樹脂に勤めていた提橋和男さん(58歳)だ。 扱い商品は活性酸素を除去する電解水を作る「トリムイオン」という整水器。 「勤めていた会社が代理店販売を始めたのですが、うまくいきませんでした。でも、購入したお客さまの反響は非常によく、私自身もバブル期に残業続きで体調を崩したときに、この電解水を飲んだら回復した経験がありました。そこで、こうなったら一生つき合っていこうと考えました」
99年に52歳で会社を去ったときの退職金の一部を事業資金に「トリムイオン」を販売する事業を共同経営でスタートした。ところが、共同経営者が別事業で失敗し経営破綻。虎の子の事業資金のほとんどを失った。
そんな時、起業した先輩から「法人化はおいおいやればいいのさ」とアドバイスされ、2000年3月から「水の舞普及会」を個人事業主としてスタートさせた。「在職中からホームページを通じて販売していたので、水の舞サイトを引継ぎ、大々的にリニューアルしました。初年度はホームページ製作・更新費に約400万円を投入、アクセス数を上げるため、自分でも延々とアクセスし続けました。とにかく、検索エンジンのトップにもっていくことを目ざしていました」
しかし、1台20万〜25万円もする高額商品ということもあって、販売はなかなか伸びなかった。 転機になったのはテレビの情報番組に「電解還元水」が取り上げられたことだった。放送直後からホームページのアクセス数が2000〜3000にも跳ね上がり、一ヵ月に100〜150台も売れた。マスコミに取り上げられ、話題になるときは劇的に売れるが、しばらくすると下がることを繰り返しながら、今は安定した販売数に落ち着いている。
「リストラされたとき、もう二度とサラリーマンはやりたくないと思いました。でも、起業してからは、黙っていても給与が入るありがたみを痛感させられてもいました。それでも、会社組織の圧迫感から解放された喜びの方が大きいですね。経営者には定年がないので、まだまだ頑張りますよ」